「辞める」しかないと思ったときに、いったん立ち止まって考えてほしいこと
親の介護が始まると、これまで当たり前だった生活が少しずつ変わっていきます。
病院への付き添い。
介護サービスの手続き。
ケアマネジャーとの面談。
家族との話し合い。
急な呼び出し。
そして、教員という仕事をしていると、
「学校を休むわけにはいかない」
「授業に穴をあけられない」
「保護者や子どもたちに迷惑をかけたくない」
そんな気持ちも強くなります。
介護と仕事。
どちらも大切だからこそ、
「もう、仕事を辞めるしかないのかな」
と考えてしまうこともあると思います。
私自身も、親の介護を経験する中で、仕事と家族のことをどう両立していくのかを考えてきました。
だからこそ、介護を理由に退職を考えている教員の方に伝えたいことがあります。
退職を決める前に、一度だけ立ち止まって考えてみてほしい。
今日は、そのための5つのポイントをまとめます。
「本当に退職しかないのか」を考える
介護が始まったとき、最初に考えがちなのが、
「仕事を辞めれば、介護に専念できる」
ということです。
確かに、仕事を辞めれば時間は増えます。
しかし、それが必ずしも「介護が楽になる」ことにつながるとは限りません。
介護は、いつまで続くのか分からないからです。
数か月で終わる場合もあれば、何年も続くこともあります。
その間、仕事を辞めてしまうと、
- 収入が減る
- 社会とのつながりが減る
- 将来の年金に影響する可能性がある
- 再就職が難しくなる
- 介護中心の生活になり、自分の時間がなくなる
ということも考えなければなりません。
だからこそ、
「介護がある=退職」
とすぐに結びつけないことが大切です。
例えば、
- 勤務時間を調整できないか
- 休暇制度を利用できないか
- 家族と介護を分担できないか
- 介護サービスを増やせないか
- ショートステイを利用できないか
- 一時的に働き方を変えられないか
など、選択肢を一つずつ考えてみます。
「辞める・辞めない」の二択ではなく、
どうすれば仕事と介護を両立できるか
という視点に変えてみることです。

介護に「どれくらいのお金」が必要なのかを知る
退職を考えるとき、忘れてはいけないのがお金の問題です。
介護には、思っている以上にさまざまな費用がかかります。
介護サービスの利用料だけではありません。
- 医療費
- 交通費
- 紙おむつなどの日用品
- 食費
- 住宅改修費
- 通院の付き添いにかかる費用
- 施設を利用する場合の費用
などがあります。
さらに、自分が退職すれば、今度は自分の収入が減ることになります。
ここは、かなり重要です。
例えば、
「親の介護費用は親の年金でまかなえる」
としても、
「自分の生活費はどうするのか?」
という問題が残ります。
だから退職を決める前に、一度、
親のお金
- 年金はいくらか
- 預貯金はいくらあるか
- 医療保険や介護保険はどうなっているか
- 介護サービスに毎月いくら必要か
自分のお金
- 毎月の生活費はいくらか
- 退職すると収入はいくら減るか
- 貯蓄だけで何年生活できるか
- 将来の年金はどうなるか
を書き出してみることをおすすめします。
頭の中だけで考えていると、不安がどんどん大きくなります。
数字にしてみると、
「思っていたより大丈夫かもしれない」
ということもあります。
反対に、
「やっぱり退職は慎重に考えたほうがいい」
と気づくこともあります。
介護と仕事を考えるとき、
気持ちだけでなく、数字を見ること。
これはとても大切です。
「自分一人で介護する」という考えを手放す
介護をしていると、
「自分がやらなければ」
という気持ちになりがちです。
特に、教員は責任感が強い人も多いのではないでしょうか。
仕事でも、
「自分が担当だから」
「自分が最後までやらなければ」
と頑張ってしまう。
それと同じ感覚で、介護まで一人で背負ってしまうことがあります。
でも、介護は一人で抱えるものではありません。
介護保険のサービスがあります。
ケアマネジャーもいます。
訪問介護、デイサービス、ショートステイなど、さまざまなサービスがあります。
家族がいるなら、できることを分担する方法もあります。
大切なのは、
「私が全部やる」ではなく、「どうすれば一人で抱えなくて済むか」を考えること。
です。
介護の専門家に相談すると、
「そんな方法があったんだ」
と驚くことがあります。
介護が大変になってからではなく、
「今後、介護が重くなったらどうしたらいいですか?」
と早めに相談しておくことも大切です。
「教員を辞めた後の自分」を想像してみる
これは、私が特に考えてほしいと思うことです。
「介護のために退職する」
という決断をするとき、
どうしても、
「介護をする自分」
ばかりを考えてしまいます。
でも、考えてほしいのはその先です。
親の介護が落ち着いたら、自分はどうしたいでしょうか。
例えば、
- もう一度働きたい
- 教育に関わる仕事を続けたい
- 家庭教師をしたい
- 非常勤講師として働きたい
- オンラインで仕事をしたい
- ブログやnoteを書きたい
- AIを使った仕事をしてみたい
- 新しいことを学びたい
など、いろいろな可能性があります。
大切なのは、「教員を辞めたら何をするか」だけでなく、「これからどんな働き方や暮らし方をしたいか」を考えることです。
教員として培ってきた経験は、学校の外でも生かせる場面がたくさんあります。
教員を退職したら、
「私はもう教育とは関係なくなる」
と思ってしまう人もいるかもしれません。
でも、そんなことはありません。
親の介護をきっかけに退職を考えている方は、退職を決める前に確認しておきたいことを、こちらの記事で詳しくまとめています。https://fujicchi1102.com/?p=652
教員時代に身につけた「人に分かりやすく伝える力」「相手の話を聞く力」「計画を立てて進める力」は、学校以外の仕事でも役立ちます。
私自身も、教員を離れてから「これまでの経験を別の形で生かすことができる」と少しずつ気づくようになりました。
教員として身につけてきた経験は、簡単にはなくなりません。
人に教える力。
相手の話を聞く力。
文章を書く力。
人を支える力。
計画を立てる力。
パソコンを使って仕事をする力。
こうした経験は、別の働き方でも十分に生かせます。
だから、もし退職を選ぶとしても、
「介護のために仕事を失う」ではなく、「これからの働き方を組み直す」
という視点を持ってほしいと思います。
「介護が終わった後の人生」も考えておく

介護をしていると、
「今は親のことで精いっぱい」
になってしまいます。
それは当然のことです。
でも、親の介護と同時に、
自分の人生も続いています。
ここを忘れないでほしいと思います。
親のことを大切にする。
それと同時に、自分の人生も大切にする。
この二つは両立していいのです。
介護が終わったとき、
「私は何をしたい?」
「どんな毎日を送りたい?」
「どんな仕事なら続けられそう?」
「どんな場所に行きたい?」
「誰と過ごしたい?」
少しずつでも考えておきましょう。
例えば、
「介護が落ち着いたら旅行に行きたい」
でもいい。
「また子どもたちに教える仕事がしたい」
でもいい。
「今度は時間に余裕のある働き方をしたい」
でもいい。
「これまでできなかったことをやってみたい」
でもいい。
介護に向き合っている間も、自分自身のこれからを少しずつ考えておくことは大切です。
「介護が落ち着いたら、どんな暮らしをしたいだろう」
「どんな働き方なら、自分らしく続けられるだろう」
すぐに答えを出す必要はありません。
介護をしながらでも、自分の人生の次のページを少しずつ考えておく。
それも、これからの自分を守るための大切な準備だと思います。
だからこそ、介護をしながらでも、
自分の人生の次のページを少しずつ考えておく。
それも大切な準備だと思います。
「退職しない」ことだけが正解ではない
ここまで読むと、
「じゃあ、介護を理由に退職してはいけないの?」
と思うかもしれません。
もちろん、そんなことはありません。
状況によっては、退職が最善の選択になることもあります。
大切なのは、親の状態だけで判断しないことです。
家族の状況、自分の体力、仕事の負担、そして経済的な余裕。
それらを一つずつ整理したうえで、自分と家族にとって無理のない選択を考えていくことが大切です。
さまざまな事情を考えた上で、
「今は仕事を辞めて、親との時間を大切にしたい」
と決めることも、一つの大切な選択です。
大事なのは、
「介護が大変だから辞める」だけで決めないこと。
そして、
「辞めた後の生活」まで考えてから決めること。
だと思います。
なお、退職を決める前には、介護休暇・介護休業など、仕事を続けながら使える制度についても確認しておくことが大切です。制度やお金、働き方については、こちらの記事で詳しくまとめています。
退職届を出す前に、一度書き出してみよう
もし今、「もう辞めるしかない」と思っているなら、退職届を出す前に、一度だけ立ち止まって、自分の状況を書き出してみてください。
頭の中だけで考えていると、不安ばかりが大きくなってしまうことがあります。
紙に書き出すことで、「本当に退職しかないのか」「ほかに使える制度や方法はないか」が少しずつ見えてきます。
たとえば、次の5つを書き出してみます。
- 今、いちばんつらいことは何か
- 親の介護で、実際に必要になっていることは何か
- 仕事を続けるうえで負担になっていることは何か
- 使えそうな介護休暇・介護休業などの制度はないか
- 家族や職場、専門家に相談できることはないか
すぐに答えが出なくても大丈夫です。
「退職する・しない」を決める前に、自分が抱えているものを一つずつ整理することが大切です。
「退職する」と決める前に確認したい3つのこと
「もう仕事を辞めるしかない」
と思っているなら、退職届を書く前に、紙に次のことを書いてみてください。
①介護で困っていること
何が一番大変なのか。
②仕事で困っていること
何が両立を難しくしているのか。
③誰に頼れるか
家族、親族、ケアマネジャー、介護サービスなど。
④お金のこと
介護費用と、自分の生活費。
⑤退職した後にしたいこと
介護だけではなく、自分自身の人生について。
この5つを書くだけでも、頭の中が少し整理されます。
介護は「頑張ること」ではなく「続けられる形」をつくること
親の介護が始まったとき、
「できるだけ親のために頑張りたい」
と思うのは自然なことです。
でも、介護は短距離走ではありません。
長く続く可能性があります。
だから、
頑張れる方法ではなく、続けられる方法を探す。
これが大切なのだと思います。
仕事を続けながら介護する。
勤務時間を調整する。
家族と分担する。
介護サービスを利用する。
一度仕事を離れる。
そして、別の働き方を探す。
どれが正解ということではありません。
大切なのは、
親の人生だけでなく、自分の人生も一緒に考えること。
教員として長く働いてきたからこそ、
「仕事を辞める=人生の終わり」
ではありません。
むしろ、働き方を見直すきっかけになることもあります。
おわりに
親の介護が始まると、
「仕事と親、どちらを選ぶのか」
という苦しい気持ちになることがあります。
でも、本当は二者択一ではないのかもしれません。
介護サービスを利用する。
家族と分担する。
働き方を変える。
仕事を一度離れる。
そして、また働く。
いろいろな選択肢があります。
私自身も、親の介護を経験しながら、
「これから自分はどう働いていくのか」
を考えるようになりました。
以前は、仕事を辞めることに対して、
「これまで積み上げてきたものを失う」
ような感覚がありました。
でも、今は少し違います。
減らすものがあれば、増やせるものもある。
仕事を減らすことで、家族との時間が増える。
肩書きを手放すことで、自分のやりたいことが見えてくる。
働き方を変えることで、これまでとは違う可能性が見えてくる。
介護をきっかけに、人生の後半をもう一度考えてみる。
それも一つの選択なのだと思います。
もし今、親の介護を理由に退職を考えているなら、
「辞めるか、辞めないか」だけではなく、
「私はこれからどんな人生を送りたいのか」
まで、一度考えてみてください。
それが、退職を後悔しないための最初の一歩になるかもしれません。



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