
「授業に失敗したらどうしよう」

「子どもの前でうまく話せるだろうか」

「指導教員から厳しく注意されたらどうしよう」
教育実習が始まると、授業や指導案のことで頭がいっぱいになるかもしれません。
もちろん、授業を考えて準備することは大切です。しかし、教育実習で学べるのは授業づくりだけではありません。
休み時間に子どもと話したり、給食や清掃を一緒にしたり、先生方の子どもへの接し方を見たりすることも、大切な学びです。
そして、教育実習中に失敗するのは決して悪いことではありません。
今回は元小学校教員の立場から、教育実習で大切にしてほしい「失敗を怖がらないこと」と「子どもと関わること」についてお伝えします。
教育実習は、失敗しないための場所ではない
教育実習に行くと、「実習生として、きちんとしなければならない」と考える人も多いと思います。
授業で間違えてはいけない。
指導案どおりに進めなければならない。
先生方に迷惑をかけてはいけない。
そう思うほど緊張し、思うように動けなくなることもあります。
しかし、教育実習は、完成した先生として働く場所ではありません。実際の学校現場で経験しながら、先生の仕事を学ぶための場所です。
初めから授業が上手にできなくても、子どもへの声のかけ方に迷っても、分からないことがあっても不思議ではありません。
大切なのは、失敗しないことではなく、失敗したあとにどうするかです。
授業がうまくいかないことは珍しくない
一生懸命に準備した授業でも、予定どおりに進むとは限りません。
例えば、次のようなことが起こるかもしれません。
- 予想していた答えが子どもから出ない
- 説明しても内容が伝わらない
- 授業が予定より早く終わってしまう
- 反対に、時間が足りなくなる
- 緊張して話す内容を忘れる
- 一部の子どもしか発言しない
- 指示がうまく伝わらず、教室が落ち着かなくなる
ですが、このようなことは、教育実習生に限った話ではありません。
経験を積んだ教員でも、子どもの反応を見ながら授業を修正することがあります。実際の授業は、指導案に書いたとおりに進めるだけでは成り立たないからです。
予定とは違う反応が返ってきたときには、「失敗してしまった」と考えるだけでなく、子どもの姿を見てみましょう。
「説明のどこが分かりにくかったのだろう」
「子どもは何につまずいていたのだろう」
「別の聞き方をしたら、考えを引き出せただろうか」
こうした振り返りが、次の授業につながります。
失敗したときは隠さずに相談しよう
失敗したと感じたとき、自分だけで何とかしようとしたり、うまくいかなかったことを隠したりしたくなるかもしれません。
しかし、分からないことや迷っていることは、早めに指導教員へ相談しましょう。
例えば、次のように相談できます。
「今日の授業では、私の説明が子どもたちにうまく伝わりませんでした。どのように説明すればよかったでしょうか」
「発言する子が偏ってしまいました。ほかの子の考えも取り上げるには、どうすればよいでしょうか」
ただ「うまくできませんでした」と伝えるだけでなく、自分が困ったことや知りたいことを具体的にすると、指導教員も助言しやすくなります。
指導を受けたときには、できなかった自分を責めすぎる必要はありません。
助言されたことを一つでも次に試してみる。その繰り返しが、教育実習での成長につながります。
教育実習では子どもと積極的に関わろう
教育実習では、授業の準備に時間を取られ、ほかのことに目を向ける余裕がなくなることがあります。
けれど、ぜひ大切にしてほしいのが、子どもと直接関わる時間です。
休み時間になっても教室の後ろで見ているだけでは、子どものことを十分に知ることはできません。
最初は緊張しても、自分から挨拶したり、話しかけたりしてみましょう。
特別に面白い話をする必要はありません。
「今日は何をして遊ぶの?」
「その絵は何を描いているの?」
「今読んでいる本、おもしろそうだね」
そんな短い言葉から、子どもとの関わりは始まります。
子どもから話しかけてくれるのを待つだけでなく、自分から一歩近づいてみることが大切です。
授業以外の時間に見える子どもの姿がある
子どもと関われるのは、授業中だけではありません。
- 登校後の朝の時間
- 休み時間
- 給食
- 清掃
- 帰りの会
- 委員会やクラブ活動
- 学校行事の準備
こうした時間には、授業中とは違った子どもの姿が見えてきます。
授業中はあまり発言しない子が、休み時間には友達へ優しく声をかけているかもしれません。
いつも元気に見える子が、清掃中には困っている友達を気遣っているかもしれません。
一方で、休み時間に一人で過ごしている子や、友達との関係に悩んでいるように見える子がいることにも気づくかもしれません。
先生の仕事は、教科を教えることだけではありません。
子ども一人ひとりを理解し、その子が安心して学校生活を送れるように支えることも大切な仕事です。
教育実習では、授業中だけでなく、学校生活全体の中で子どもの姿を見てほしいと思います。
子どもの名前を呼んでみよう
子どもと関わるために、できるだけ早く名前を覚えることも大切です。
自分の名前を呼んでもらうと、子どもは「自分のことを見てくれている」と感じます。
最初から全員の名前を覚えられなくても大丈夫です。座席表を見ながら、少しずつ覚えていきましょう。
名前を覚えるときには、子どものよいところや気づいたことも一緒に覚えておくと、会話のきっかけになります。
「昨日、係の仕事をしていたね」
「友達に優しく教えていたね」
「休み時間に読んでいた本、おもしろかった?」
ただし、子どもの名前や家庭事情などを書いたメモは個人情報です。学校の外へ持ち出してよいかを確認し、なくさないよう十分に注意してください。
よく話す子だけでなく、いろいろな子に目を向けよう
実習生が教室に来ると、積極的に話しかけてくる子がいます。
「一緒に遊ぼう」
「こっちに来て」
「先生、聞いて」
そのように声をかけてもらえるとうれしいものです。
一方で、自分からは話しかけてこない子もいます。
静かに過ごすことが好きな子、どう話しかければよいか迷っている子、新しい人との関わりに時間が必要な子もいます。
積極的に話しかけてくれる子だけでなく、教室全体を見渡してみましょう。
無理に話を聞き出す必要はありません。そばで一緒に活動したり、短く挨拶したりするところから始めれば十分です。
特定の子だけと親しくなりすぎず、いろいろな子に目を向けることを意識してみてください。
子どもと関わることで授業も変わる
休み時間や給食の時間に子どもと関わることは、授業づくりにもつながります。
子どもが何に興味をもっているのか。
どのような言葉なら伝わりやすいのか。
誰と誰が声をかけ合っているのか。
どの子が、どのような場面で困りやすいのか。
日頃の関わりから見えてきたことは、発問や教材、グループの組み方、個別の声かけを考える手がかりになります。
指導案だけを見て授業を考えるのではなく、目の前にいる子どもの姿を思い浮かべながら授業を考えてみましょう。
子どもを知ろうとすることは、授業をつくるうえでも大切な準備です。
子どもとの関わりで守るべきこと
子どもと積極的に関わることは大切ですが、実習生として守らなければならないこともあります。
- 個人的な連絡先を交換しない
- 子どもや学校の写真を個人のスマートフォンで撮らない
- 学校名や子どもの情報をSNSへ投稿しない
- 学校で知った家庭の事情を外で話さない
- 特定の子どもだけと親しくなりすぎない
- 判断に迷ったときは指導教員へ相談する
子どもから「内緒にしてね」と相談されることもあるかもしれません。
しかし、内容によっては実習生だけで抱えてはいけないことがあります。「誰にも言わない」と約束せず、必ず指導教員へ相談してください。
子どもとの信頼関係を大切にすることと、一人で問題を抱えることは違います。
教育実習で見てほしいのは自分だけではない
教育実習中は、「自分がどう見られているか」「自分の授業が評価されるか」が気になると思います。
しかし、自分の出来ばかりを気にしていると、目の前にいる子どもの姿を見失ってしまうことがあります。
授業中に子どもが困っていないか。
休み時間に一人でいる子はいないか。
どんなときに楽しそうな表情を見せるのか。
先生の声かけで、子どもの行動がどう変わったのか。
教育実習では、自分を評価することだけでなく、子どもを見て、知って、関わることを大切にしてください。
子どもの姿から考えられるようになると、授業の見方や先生の仕事への理解も少しずつ変わっていきます。
まとめ|失敗を恐れるより、子どものそばへ行こう
教育実習では、授業が思うように進まなかったり、子どもへの声のかけ方に迷ったりすることがあります。
それでも大丈夫です。
教育実習は、失敗しないことを証明する場所ではありません。
失敗を振り返り、先生方から助言を受け、もう一度やってみるための場所です。
そして、授業の出来だけにとらわれず、子どもと積極的に関わってみてください。
休み時間に一緒に過ごしたこと。
名前を覚えて声をかけたこと。
子どもの小さな変化に気づいたこと。
そうした経験も、教員になるための大切な学びです。
完璧な実習生になろうとしなくて大丈夫です。
失敗を怖がって教室の後ろに立ち続けるよりも、目の前の子どものそばへ行き、話を聞いてみてください。
そこで気づいたことや感じたことが、これからどのような先生になりたいのかを考える、大切な一歩になるはずです。


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