
「自分は教員に向いているのだろうか」

「人前で話すのが苦手だから、先生にはなれないかもしれない」

「教育実習で失敗したら、教員を諦めたほうがいいのかな」
教員を目指して勉強していても、このような不安を感じることがあるのではないでしょうか。
周りに、模擬授業が上手な人や、子どもとすぐに打ち解けられる人がいると、自分だけが教員に向いていないように思えてしまうこともあるでしょう。
けれど、教員に向いている人には、決まった一つの型があるわけではありません。
明るく話すことが得意な先生もいれば、静かに子どもの話を聞ける先生もいます。授業づくりが得意な先生もいれば、子どもの小さな変化によく気づく先生もいます。
この記事では、元小学校教員の立場から、教員に向いている人の特徴について考えます。
ただし、ここで紹介する特徴は、教員になれるかどうかを判定するためのチェックリストではありません。今の自分に当てはまらない項目があっても、それだけで「向いていない」と決める必要はありません。
教員に向いている人には一つの型があるわけではない
教員に向いている人と聞くと、どのような人を思い浮かべますか。
- 明るくて元気な人
- 人前で堂々と話せる人
- 子どもから好かれる人
- 授業が上手な人
- 学級をうまくまとめられる人
確かに、このような力が生かされる場面はあります。
しかし、学校にはさまざまな子どもがいます。元気に発言できる子もいれば、人前で話すことが苦手な子もいます。すぐに人と打ち解けられる子もいれば、安心して話せるようになるまで時間が必要な子もいます。
だからこそ、先生にもいろいろな人がいてよいのだと思います。
元気に学級を盛り上げる先生だけでなく、一人ひとりの話を丁寧に聞く先生も必要です。新しいアイデアを次々と出す先生だけでなく、毎日の仕事をこつこつ続ける先生も学校を支えています。
誰かのよさを見て、「自分には同じことができない」と落ち込まなくても大丈夫です。
特徴1.子どもを一人の人として大切にできる
教員にとって大切なのは、子どもを一人の人として見ることです。
同じ学年でも、得意なことや苦手なこと、家庭環境、性格、成長の速さはそれぞれ違います。
大人にとっては小さなことに見えても、子どもにとっては大きな悩みであることもあります。
「どうしてできないのだろう」と決めつけるのではなく、「どこで困っているのだろう」と考える。
自分の考えを押しつける前に、子どもの話を聞いてみる。
このように、一人ひとりを理解しようとする姿勢は、教員に必要な力です。
子どもとすぐに仲良くなれることよりも、目の前の子を知ろうとすることのほうが大切な場合もあります。
特徴2.子どもの小さな変化に目を向けられる
学校では、子どもがいつも分かりやすく助けを求めるとは限りません。
普段より口数が少ない。
授業中に手が止まっている。
休み時間に一人でいる。
忘れ物が急に増えた。
いつも一緒にいる友達と話していない。
こうした小さな変化に気づくことが、子どもを支えるきっかけになります。
すぐに正しい対応ができなくても構いません。
「いつもと少し違うかもしれない」と感じたら、ほかの先生に相談したり、しばらく様子を見たりすることができます。
目立つ子だけでなく、声を上げにくい子にも目を向けようとする人は、その力を教員の仕事に生かせるでしょう。
特徴3.人の話を聞くことができる
教員には話す力が必要だと思われがちです。
確かに、授業では説明や指示をする機会が多くあります。しかし、それと同じくらい、人の話を聞くことも大切です。
- 子どもの話を最後まで聞く
- 言葉にできない気持ちを急かさずに待つ
- 保護者が何に困っているのかを確認する
- 同僚からの助言を受け止める
- 自分とは違う考えにも耳を傾ける
話すのが得意でなくても、相手の話を丁寧に聞けることは大きな強みになります。
いつも面白い話ができる先生を目指す必要はありません。子どもが「この先生なら話しても大丈夫」と感じられることも、信頼関係につながります。
特徴4.分からないことを質問できる
教員になると、何でも一人で判断しなければならないと思うかもしれません。
しかし、学校の仕事は一人ではできません。
授業の進め方、子どもへの対応、保護者への伝え方など、判断に迷うことはたくさんあります。
そのときに、分からないまま進めるのではなく、周囲の先生へ質問できることが大切です。
特に新採教員や講師、教育実習生は、分からないことがあって当然です。
質問することは、知識がないことを見せる行為ではありません。自分だけの判断で子どもに不利益が生じないようにする、大切な行動でもあります。
相談する前に自分なりに考え、何に迷っているのかを整理して伝えられると、より具体的な助言を受けやすくなります。
特徴5.失敗から学ぼうとする
どれだけ準備しても、授業が予定どおりに進まないことはあります。
説明が子どもに伝わらなかったり、時間が足りなくなったり、予想していた反応が返ってこなかったりすることもあるでしょう。
失敗しない教員はいません。
大切なのは、失敗した自分を責め続けることではなく、次にどう生かすかを考えることです。
「子どもはどこで困っていたのだろう」
「説明を短くしたほうがよかったかもしれない」
「次は先輩の先生に相談してみよう」
このように振り返り、次の行動を一つ変えられれば、それも成長です。
初めから上手にできることより、うまくいかなかったことから学び続けられることのほうが、長く仕事をするうえでは大切かもしれません。
特徴6.周囲と協力しようとする
担任になると、自分一人で学級を受け持っているように感じることがあります。
けれど、学校は多くの人によって支えられています。
学年の先生、管理職、養護教諭、特別支援教育に関わる先生、事務職員、支援員など、それぞれの立場の人が協力して子どもを支えています。
教員に必要なのは、すべてを一人で解決する力だけではありません。
- 必要な情報を共有する
- 困ったときに相談する
- 相手の立場を考える
- 引き受けられないことを早めに伝える
- 助けてもらったら感謝を伝える
こうした関わりも大切です。
人付き合いが得意でなくても、必要なことを伝え、周囲と協力しようとする姿勢があれば大丈夫です。
特徴7.学び続けようとする
大学で教育について学び、教員採用試験に合格しても、それですべての準備が終わるわけではありません。
実際の学校には、同じ対応ではうまくいかないさまざまな場面があります。
子どもの姿や社会の変化に合わせて、教員も学び続ける必要があります。
ただし、毎日特別な研修を受けたり、たくさんの本を読んだりしなければならないということではありません。
授業後に少し振り返る。
先輩の授業を見て、よいところを一つ取り入れる。
分からないことを調べる。
子どもの反応から、自分の関わり方を見直す。
こうした小さな積み重ねも学びです。
「今はできないけれど、少しずつ覚えていこう」と思えることは、教員として大切な姿勢だと思います。
明るく話せなくても教員になれる?
「自分はおとなしいから、教員には向いていない」と悩む人もいるでしょう。
教員には、子どもの前で話したり、授業を進めたりする力が必要です。しかし、話し方や説明の仕方は、練習と経験によって少しずつ身につけられます。
無理に、いつも明るく元気な先生を演じなくても構いません。
落ち着いた声で話す先生や、子どもの話をゆっくり聞く先生に安心する子もいます。
大切なのは、自分の性格を否定して誰かのまねをすることではなく、自分のよさを生かしながら、必要な力を身につけていくことです。
授業が苦手でも教員になれる?
模擬授業や教育実習の授業がうまくできず、「教員には向いていない」と感じることもあるかもしれません。
しかし、一度の授業だけで向き・不向きは決められません。
授業は、教科書を読むだけで上手になるものではありません。教材を研究し、子どもの反応を見て、先輩から助言を受けながら少しずつ身につけていくものです。
授業が思うようにいかなかったときに、理由を振り返り、次に試してみようと思えるのであれば、その経験は無駄ではありません。
教育実習では、完璧な授業をすることより、子どもの反応を見て学ぼうとすることを大切にしてください。
子どもが好きなら教員に向いている?
子どもが好きという気持ちは、教員を目指す大切なきっかけの一つです。
ただし、教員の仕事には、子どもと楽しく過ごすこと以外の役割もあります。
授業準備、成績処理、保護者対応、会議、学校行事、書類作成などの仕事もあります。子どもの安全を守るために、注意したり、守るべき約束を伝えたりする場面もあります。
そのため、「子どもが好きだから絶対に向いている」「大変だと感じたから向いていない」と簡単には決められません。
子どもが好きという気持ちに加えて、仕事の大変な面も知ろうとすることが大切です。
「当てはまらないから向いていない」ではない
ここまで教員に向いている人の特徴を紹介しましたが、すべてに当てはまる必要はありません。
今は人前でうまく話せなくても、練習することができます。
困ったときに相談するのが苦手でも、少しずつ質問の仕方を覚えられます。
失敗を引きずってしまう人も、周囲の助けを借りながら振り返る方法を身につけられます。
教員に必要な力の多くは、経験を重ねる中で育っていくものです。
今の自分だけを見て、これからの可能性まで決めなくても大丈夫です。
教育実習で確かめたい5つのこと
教員に向いているか迷っている人は、教育実習中に次のことを考えてみてください。
1.子どもと関わったとき、どのような気持ちになったか
楽しかったかだけでなく、難しいと感じた場面も振り返ります。
2.子どもの成長に関わることに喜びを感じたか
小さな変化や成長をうれしいと思えたかを考えてみましょう。
3.大変だったことは何か
授業、子どもとの関係、体力、勤務時間など、具体的に整理します。
4.もっと学びたいと思ったことはあったか
うまくできなくても、もう一度試したいと思えたことがあったでしょうか。
5.自分が無理をしすぎていなかったか
理想の実習生を演じようとして、自分を追い込んでいなかったかも振り返ります。
教育実習は、自分に合格や不合格をつけるためだけの時間ではありません。
学校現場を知り、自分が何を感じたのかを確かめる機会でもあります。
教員になることだけが正解ではない
「今の不安だけで、教員に向いていないと決めなくてもよい」とお伝えしてきました。
一方で、必ず教員にならなければならないわけでもありません。
教員免許を取得したから、大学で教育を学んだから、周囲に期待されているからという理由だけで、自分の気持ちを押し込める必要はありません。
教育に関わる仕事は、学校の教員だけではありません。正規採用のほかに、常勤講師や非常勤講師などの働き方もあります。
一度別の仕事を経験してから教員を目指す道もあります。
実際に学校現場を経験したうえで別の道を選んでも、それは失敗ではありません。
自分の心や体を犠牲にしてまで、教員という道にこだわる必要はないのです。
まとめ|今の自分だけで向き・不向きを決めなくていい
教員に向いている人には、決まった一つの型があるわけではありません。
教員の仕事では、次のような姿勢が生かされます。
- 子どもを一人の人として大切にする
- 小さな変化に目を向ける
- 相手の話を聞く
- 分からないことを質問する
- 失敗から学ぶ
- 周囲と協力する
- 学び続ける
けれど、今の時点ですべてができる必要はありません。
苦手なことがあっても、経験を重ねたり、周囲から教えてもらったりする中で身につく力があります。
不安を感じること自体は、教員に向いていない証拠ではありません。それだけ真剣に将来を考えているからこそ、不安になることもあります。
まずは教育実習などで、実際に子どもと関わってみてください。
上手にできたかだけではなく、何を感じ、何に悩み、これから何を学びたいと思ったのかを大切にしてほしいと思います。
今の自分だけで、これからの可能性まで決めなくても大丈夫です。


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