初めての授業。初めての授業参観。初めての保護者対応。
教員になったばかりの毎日は、「初めて」の連続です。
今、目の前の仕事に追われている新採の先生。
そして、これから教員を目指している方へ。
新採指導教員として若い先生に関わっている私から、伝えたいことがあります。
最初から、何でもできる先生にならなくていい。困ったときには、周りの人の力を借りていい。
私自身も、戸惑いながら教員生活を始めました。
初めての家庭訪問で、手渡された一本のアイス
私が新採教員だったころ、4月は緊張することばかりでした。
初めての授業参観、初めての家庭訪問。
保護者は自分より年上の人ばかりです。
何を話せばいいのか。
質問されたら、きちんと答えられるだろうか。
そんな私を、ある教え子のお母さんが迎えてくれました。
「大変だね〜。頑張って〜」
部屋に入るなり、手渡されたのは棒付きのアイス。
しかも、もう袋から出してありました。
どうしよう。溶けてしまう。
私は慌てて、いただいたアイスを食べました。
その家庭訪問で何を話したのか、今ではよく覚えていません。
でも、そのお母さんが、若い担任をあたたかく迎えてくれたことは覚えています。
うまく話せたかどうかよりも、「迎えてもらえた」という気持ちが、今も残っているのです。
毎日の授業をするだけでも、大きな仕事です
今、私は新採指導教員として、若い先生に関わっています。
秋になると、毎日の授業に行事が重なり、訪問指導や校内研修、初任者研修の授業公開も続きます。
授業を準備する。
指導案を書く。
行事の準備をする。
子ども同士のトラブルに対応する。
保護者と連絡を取る。
どれも初めてなら、時間がかかるのは自然なことです。
私が関わる新採の先生には、真面目に、丁寧に取り組む方が多くいます。
だからこそ、全部きちんとやろうとして、仕事が終わらなくなってしまうこともあります。
もし今、「毎日の授業をするだけで精いっぱい」と感じていても、それだけで教員に向いていないと決めつけないでください。
毎日の授業を準備し、子どもたちと一日を過ごす。それ自体が、大きな仕事です。
授業公開のための準備に追われて、普段の授業や子どもと向き合う時間が足りなくなっているなら、指導教員や管理職に、仕事の重なりを伝えてほしいと思います。
どれを優先するか。どこまで準備するか。
その判断まで、一人で抱える必要はありません。
保護者対応は、一人でできるようにならなくていい
教員を始めたばかりのころ、特に緊張するのが保護者対応ではないでしょうか。
子どものことをよく知っている保護者と、出会ったばかりの自分。
年齢も経験も違います。
難しい質問や強い要望を受けて、すぐには答えられないこともあるでしょう。
その場で、無理に答えを出さなくて大丈夫です。
「確認してから、改めてお伝えします」
「学年の先生や管理職と相談して、ご連絡します」
そう伝え、対応を確認してから返事をすることも大切です。約束した連絡は忘れずに、難しい内容は早めに共有しましょう。
心配な懇談や電話なら、先輩や管理職に同席してもらえないか相談してみてください。
担任だからといって、すべてを一人で解決する必要はありません。
子どもたちの学校生活を支える責任は、学校全体で担うものだと私は考えています。
「分かりません」「手伝ってください」も大切な言葉
相談すると、迷惑をかけるのではないか。
こんなことも知らないと思われるのではないか。
そう考えて、声をかけられなくなることもあると思います。
でも、私は指導する立場として、困っていることを教えてもらいたいです。
相談するとき、きれいに説明できなくてもかまいません。
「明日の授業の進め方が決まりません」
「この保護者への返事を、一緒に考えてほしいです」
「仕事が重なっていて、何から始めればいいか分かりません」
そんな言葉からで大丈夫です。
相談しても十分な支援が得られないときは、指導教員だけでなく、学年主任や管理職など、別の人にも状況を伝えてください。
困り事を伝える力も、仕事を続けていくために必要な力です。
そして、相談を受け止め、支えることは、私たち周囲の教員の役割です。
指導案だけでは学べないことがある
授業の進め方や指導案の書き方を学ぶことは、大切です。
ただ、教員は人と関わる仕事です。
マニュアルや指導案を覚えるだけで、すべてに対応できるようになるわけではありません。
子どもの話を聞く。
同僚の対応を見て、自分もやってみる。
保護者と少しずつ関係を築く。
うまくいかなかったことを、誰かと振り返る。
そうした経験の中で、自分なりの関わり方が育っていくのだと思います。
勉強が得意なことと、人との関わりで迷わないことは、別の話です。
試験に合格したからといって、4月から何でもできるわけではありません。
先生はスーパーマンではないのです。
これから教員を目指す方へ
ここまで読んで、不安になった方もいるかもしれません。
入職前に、すべての授業方法や保護者対応を身につけようとしなくても大丈夫です。
見学や実習の機会があれば、授業の内容に加えて、先生たちがどう声をかけ合い、困ったときにどう助け合っているかにも目を向けてみてください。
働き始めるときには、相談できる相手や、難しい対応を一緒に担ってもらう手順を確認しておくとよいと思います。
私が望んでいるのは、先輩と一緒に仕事をしながら、少しずつ責任を担える育て方です。
副担任として経験を積み、そこに新採指導教員が入って支える。
組む担任にも負担を集中させず、1年かけて育てる。
そうした仕組みを広げることは、若い先生の努力だけではできません。
育てる側が、人員や時間を確保していく必要があります。
安心して学べる環境を求めることを、わがままだと思わないでほしいです。
仕事以外の時間も、大切にしていい
教員も、職業の一つです。
仕事は人生のすべてではありません。
休日にデートをする。
友達に会う。
趣味を楽しむ。
家族と過ごす。
何もせず、ゆっくり休む。
そうした時間は、仕事が全部終わった人だけのご褒美ではありません。
「よい先生になるため」という理由をつけなくても、自分のために過ごしていい時間です。
教員以外にも、世の中にはたくさんの仕事があります。
もし続けることがつらくなったら、働き方を変えることや、別の道を考えることも含めて、信頼できる人に話してみてください。
教員であり続けるかどうかだけで、その人の価値は決まりません。
私は、この仕事を選んだ人が、自分の暮らしを大切にしながら働けるようになってほしいと思っています。
完璧な先生より、周りと関わりながら育つ先生に
新採だった私に、一本のアイスを手渡してくれたお母さん。
あのとき覚えているのは、上手に話せたかどうかよりも、あたたかく迎えてもらったことです。
今、若い先生に関わる立場になって、私もそんな安心を届けたいと思います。
完璧な先生にならなくていい。
分からないことは、聞いていい。
困ったときには、助けを借りていい。
周りの人と関わりながら、少しずつ自分の力をつけていってほしい。
そして、先生としての仕事も、一人の人としての暮らしも、大切にしてほしい。
先生はスーパーマンではない。
これから教員になるあなたにも、今、頑張っているあなたにも、そのことを伝えたいと思っています。



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